ストラテジーに見合ったレバレッジを

先物、オプション、信用取引、FX・・・個人でも気軽にレバレッジを効かせた投資手段が広まっています。
ところで、レバレッジはどの程度掛けるのが良いのでしょう?
レバレッジを大きくするほど勝ちも負けも増幅される、という程度の認識の方も多いのではないのでしょうか?
(これは間違ってはいないのですが)


重要な結論から言います。
高パフォーマンスのストラテジーでもレバレッジを掛けるほど儲けが倍増するとは限りません。
ストラテジーの質によって、パフォーマンスを最大化するレバレッジというものがあります。


純化した分かりやすい例を挙げましょう。
2/3の確率で20%のリターン、1/3の確率で-20%のロスとなるストラテジーで繰り返し資産運用を続けるとします。
都度その時点の全資産レバレッジ1倍で3回勝負して、理論どおり勝ちが2回、負けが1回の結果なら、次の結果になります。

勝負回 資産倍率
1(勝ち) 120.0%
2(勝ち) 144.0%
3(負け) 115.2%


資産は115.2%に増加します。
このストラテジーなら、レバレッジを掛けた方が良いパフォーマンスが得られそうですが・・・
もしもレバレッジ5倍を掛けると、次の結果になります。

勝負回 資産倍率
1(勝ち) 200.0%
2(勝ち) 400.0%
3(負け) 0.0%


勝ちではその都度、保有資産の100%という脅威のリターンが得られますが、負けで-20%×5 = -100%・・・
つまり全損敗退となるわけです。
最大ドローダウンが大きい場合に高レバレッジを掛けると悲惨になる例ですね。


では、このストラテジーに対する最良のレバレッジはいくつでしょう?
ちょっとややこしい数学の問題なのですが、答えは5/3 ≒ 1.666・・・です。(※1)
ちなみに、このレバレッジ 1.666・・・を掛けて上記の勝負をした場合は、次の結果となります。

勝負回 資産倍率
1(勝ち) 133.3%
2(勝ち) 177.7%
3(負け) 118.5%


意外と小さいレバレッジと思いませんか?
2倍、3倍と大きなレバレッジを掛けてもパフォーマンスは良くなりません。
むしろ3.1倍より大きなレバレッジを掛けて、同様の勝負をすると最後の資産倍率は100%以下、つまり損してしまいます。


現実問題は、何%のリターンやロスを得る確率がそれぞれどの程度と複雑ですし、バックテストと実運用では結果が
大きく違ってしまうこともあるでしょう。
そういった問題はおいても、掛けるべきレバレッジはストラテジーの質次第と言えます。
何はともあれ、ただ欲に駆られて高レバレッジを掛けても良い結果は得られません。


(※1) 代数式 y(x) = - 0.008 x^3 - 0.04 x^2 + 0.2 x + 1 の最大値を与える正のxが解となります。