リスクプレミアム3
リスクプレミアム2の続きです。
前回は、東証一部、DJI(NYダウ)の2007/06/30現在の市場平均リスクプレミアムを概算してみました。
東証一部市場平均リスクプレミアム = 9.95%
DJIリスクプレミアム = 5.40%
(前回算出結果の再掲)
このリスクプレミアム値から、東証一部、DJI(NYダウ)のいずれが買えると判断できるか?ということです。
前回もお話しましたが、株価は言い値ですから、リスクプレミアムは市場のセンチメントを表しています。
リスクプレミアムが相対的に高いということは、次の理由が考えられます。
(1) PER、利益成長率、長期金利以外の観点でデメリット・リスクがある(高PBR、株式取引税が高い等)
(2) 算出に用いたPER、利益成長率、長期金利の見通しに対して市場が疑いを持っている
(3) その銘柄の相対的な投資価値が見落とされている(割安放置されている)
(1)のようなデメリット・リスクが無く、用いたPER、利益成長率、長期金利も概ね実際の値と合致すると
すれば(実際はこの前提の評価が難しいのですが)、リスクプレミアムの大きい東証一部の方が(3)に該当し、
買いと言えます。
(ただし、現実問題として今、DJIより日経、TOPIXの方が買いと考えているかというとそうでもありません。
(1),(2)の問題を多少なりとも抱えていると考えているからです。また、相対的にということであって
今後、いずれのインデックスもリスクプレミアムが拡大していく可能性もありえます。)
一方、バブルなどは楽観によってリスクプレミアムが極度に縮小した状態とも言えます。
小さなリスクプレミアムを選択する事を「投機的」と言います。
バブルが極まると、リスクプレミアムがマイナスにまで至ることがあります。
例えば、ITバブル真っ盛りの2000年、S&P500インデックスのリスクプレミアムはマイナスだったそうです。
そのときS&P500インデックスを買っていれば、損していた可能性は高いでしょう。
ITバブルに至る途中の1996年12月、当時のFRB議長グリーンスパン氏がリスクプレミアムが低下した状況を
「irrational exuberance(根拠なき熱狂)」と評したスピーチは有名です。
S&P500等のインデックスでは、リスクプレミアムの高さと、そのときに買った場合のパフォーマンスに
はっきりと相関が見られるそうです。(ここではその資料は提示できませんが)
私個人は、リスクプレミアムの扱いについて以下のように考えています。
- リスクプレミアムは金利や成長率を織り込む分、単なるPERの比較よりは妥当性がある
- リスクプレミアムが高ければ必ずしも買いとは言い切れないが、投資の好機である可能性が高い
- リスクプレミアムが低い(0に近い、マイナス)ときに買ってはならない
(終わり)